19-20プレミアリーグ チェルシー対リバプール ハイプレスの中で
今期もワクワクのプレミアリーグから今節はリバポ対チェルシーを見て行こう。
宿願のプレミア制覇へひた走るはリバプール。大きな補強はないが怪我人の復帰やメンバーの成熟もあってシティと並ぶ優勝候補である。CLのナポリ戦は敗れたもののPLでは5連勝で首位である。3トップの怪我だけが唯一の不安材料か。
対するはホームのスタンフォードブリッジで待ち構えるチェルシーである。新監督のレランパードa.k.aレジェンドが率いる。今期はユース出身の選手も多くチェルシーらしからぬ陣容である。
メンバーはこちら。
リバポはGK以外はベストメンバーか、チェルシーは初めてみる選手が多い。CFのエイブラハムが爆発中のようである。
ミラーゲーム
同じような陣形から共にハイプレスとカウンターを主とする両チームの対戦は激しいプレス合戦となった。
リバポはいつも通りのWG外切りからの中央刈り取りプレス、アンカーのジョルジーニョに対して躊躇なくプレスに行くファビーニョが印象的。
IHの2度追いやフェルミーノのコース消し(カバーシャドウ)など種としてはわかっているのだが、チェルシーレベルの選手でも嵌めていくリバポ。
わかっていても止められないのはオフェンスだけではないことを認識させられる。
特にジョルジーニョやコバチッチクラスの選手でも慌ててパスミスをする姿が印象的である。
ここで刈り取れなかった選手はダイクとマティプで潰す安心設計。この試合のマティプは地上戦に空中戦にと存在感を出しまくっている。
チェルシーとしても繋ぎまくるという意思はなく、あくまで基本はボールを大事にだが無理ならエイブラハムやWGへ蹴っ飛ばすという感じであった。
一方のチェルシーの守備
序盤はリバポの蹴っ飛ばしたため機会自体は少なかった。
基本線は敵陣でもCBに対してプレスをかけ、GKに下げればそのまま追いかける形。
右ではカンテが前に出て、左ではCBに対してマウントが寄せる。相手の右SBに入った時、マウントはそのまま追いかけていく。
割と噛み合わせ通りの選手にプレスをする。誰一人サボることなく献身的に守備をするのが印象的である。
序盤はお互いのプレスをミドルゾーン(中盤)で上手く外せればチャンスが生まれており、チェルシーでいえばコバチッチがドリブルで剥がした場面がチャンスに繋がっている。
リバポは13分ファビーニョが上手く持ち上がってプレスを外しマネへ繋ぐ。この流れで得たFKをアーノルドがブチ込んでリバポが先制。
ここでエメルソン⇨アロンソ(怪我のため)
失点後のチェルシーの反撃
失点後も果敢に攻撃を仕掛けていくチェルシー、この辺りではペースを握っていた。
一つの要因としてサラーとマネを抑えることができていたことが挙げられるであろう。
右サイドでは対人のスペシャリストであるアスピリクエタが、左ではCBトモリがそれぞれマネとサラーに仕事をさせず。
また、SBの上がりを活用することでリバポの圧縮守備に対抗していく、特に途中出場のアロンソは積極的な上がりからの高精度なクロスでチャンスを作っていく。
徐々にフリーになりつつあったジョルジーニョはサイドチェンジからリバポの守備にズレを生んでいく。
そして26分サイドから崩してアスピリクエタが押し込むも無常のVAR。その後FKからフェルミーののヘッドで2−0とするリバポ、チェルシーは決して悪いプレーをしている訳ではないため、セットプレー2発は中々苦しいところ。
リバポの保持
ボール保持はリバポの方が少し長いが崩しきっている訳では無く、特にサラーがブレーキとなっていた印象。
形はこんな感じ。(アーノルドやマティプがボールを持つ回数が多いのはチェルシーがマティプにボールを持たせたがっていた感じがある。)
- サラーの裏
- 降りてくるフィルミーノ
- CFとWGの間に落ちるヘンダーソン
- 大外のマネ
辺りが選択肢となっている。チェルシーは特に危険な上2つに対応できており、下二つはある程度防げていたのでボール保持の攻撃ではそこまで危険度がないリバポである。
ただ、リバポが強みを発揮する敵陣での守備からカウンターはWGの裏にボールを送り込むことが1つのスタートとなっており、サラーマネが止められてもそこから守備をすることで再攻撃を狙う。
このWGにボールを入れる時にIHの二人のサポートは特に早いのは、攻撃のためだけでは無くその後の守備も念頭に入れているというナイスな設計である。
このタスクや守備の設計から読み解くに、リバポのIHはライン間で受けるというよりは走れて戦える選手を優先しているのだろう。ただボール保持ではIHはやや消えており(特にワイナルダム)、この辺りは改善の余地がありそう。
IHが消える分大外のSBの上がりが強烈なので十分なのかもしれないが。
チェルシーの大外アタックとリバポのカウンター
後半に入ると序盤、リバポが攻め立てていく。上記のビルドアップの形から両SBが上がり崩しを目指す。連続してセットプレーが起こるもしのいでいくチェルシー。
序盤の危機を凌ぐと再び攻め返していくのはチェルシーで、大きな狙いは前半同様サイドチェンジからのアロンソである。大外のアロンソに振ってからもう一度大外のウィリアンやアスピリクエタに展開したり、中央のエイブラハムを狙うことでゴールを狙う。
この形はリバポの圧縮守備の有効であり 、リバポを崩す鍵となりそうであった。
具体的にはこんな形も。
さりげなくアロンソが上がったスペースを使うコバチッチも憎い働き。
右サイドではウィリアンが躍動し外に中にとチャンスを作っていく。
チェルシーの惜しかった点は崩しの局面で単調になってしまったことか。時間がたつにつれて大外に振ったあとにクロスを入れる形が多く、ここで一工夫できれば違った結果になったかもしれない。
考察
なぜこの大外アタックが可能になったのか見ていこう。
大外展開のためには
- 蹴り手
- 受け手
の二人がフリーになる必要がありまずは蹴り手の方から見ていこう。
ロングボールを供給していたのは主にCBコンビとジョルジーニョである。この二人がフリーになる場面を見ていくとリバポの圧縮守備に対して一旦比較的近距離のサイドチェンジをできた時(プレスを外した時)が多い。サイドチェンジで揺さぶった後にスライドで間に合わない中央でボールを受け展開する。
具体例はこちら
一旦プレスに行った後だと3トップは戻れず、3センターも一度引くのでリバポの中盤と前線の間にスペースができる。
受け手に関しては
- 3センターのスライドが間に合わない
- WGの守備能力
- SBはチェルシーのWGにピン止め
辺りが考えられる。
特にサラーのサイドではアロンソが上がりまくりチャンスを生んでいた。
おそらくクロップとしてはこのエリアは捨てており、クロスは中で対抗しようということなのだろう。
試合に戻る。
69分チェルシーはカンテのゴール1点差に。
このゴールはサイドチェンジから始まっており、コバチッチが逆サイドのアスピリクエタに送り、カンテにパスしてからのゴラッソであった。
この後ミルナー←マネで、ワイナルダムが左WGに入る。対SB守備要員だろうか。
チェルシーの最後のカードはバチュアイ←エイブラハム
この時間はチェルシー優位の状況が続く、セカンドボールを上手く回収できているので2次攻撃に繋げていく。ただ崩しが結局クロスだけになってしまったのは痛っかたか。
なんとか訪れた決定機もバチュアイのヘッドやマウントのシュートは枠を捉えず。
オープンなゲーム展開の中でリバポもカウンターに出るが、この試合不調のサラーが止められ続けチャンスがないリバプール。
なんとか耐えたリバプールがこの1戦を制した。
感想
ホームのチェルシーはいい試合をしていたと思う。中盤3人のパフォーマンスが良く、相手のプレスをいなしつつボールを動かしている。SBの二人、特にアロンソは出色の出来でクロスから決定機を演出。CBのトモリはサラーを押し込み続け、アロンソが上がりやすくなっていた。惜しむらくは怪我で交代カードを2枚使っていたことか。繋ぎは出来ていたので、マウントをペドロやプリシッチを入れることができればまた違った展開だったのかも。
対するリバポ、押される時間あったものの危なげなく勝ち切った印象。CBコンビの安心感は異常である。
地味にハイプレスを喰らった時のIHのパフォーマンスは気になるところかも。
サラー不調もセットプレー2発で勝ち切る辺りが今シーズン期待できる点かと。
fin