マンチェスターシティ対チェルシー 狙いを読み解きましょう。
足元をすくわれた格好になったニューカッスル戦後はエバートン、アーセナルを下したマンチェスターシティ。引き続きリバプールを追いかける。
対するは開幕後の高評価はどこへやら、解任論までとびだしているサッリ監督率いるチェルシーの一戦となる。
メンバーはこんな感じ
ターンオーバー感のあるシティだがはたして いつのまにかイグアインが来ている。
流離のストライカー感が異常。
監督にまつわるエトセトラ的な(一般的な)
いわゆるチームスポーツ(引いていうのなら戦争)では大まかに「自軍」と「相手軍との差異」の二つの事柄が勝敗を左右する。
「相手軍」ではなく「差異」をつけたのが個人的なポイントである。
サッカーの試合では相手が常に存在するため相手との関係性が大切になってくる。
自軍にまつわる事柄は
選手の質や個性、監督の力量や作戦やプレーモデル、フロントやスカウト、オーナー、果てはそのクラブの歴史などが挙げられる。
相手軍も同様な事象があり、この同様なパラメータにおける自軍と相手軍の違いが差異となって出てくる。
差異は具体的に相手が自軍より優れている所、相手が自軍より劣っているところ。相手と自軍の選手の違い、戦術戦略の違い、監督のプレーモデル作戦哲学の違いなどなど他にもたくさん存在する。
自軍により注力して試合に臨むのか、それとも相手軍との差異をより注目して試合に臨むのかは監督のキャラクターにもよるのだろう。
前者の代表例は古くはゼーマンやペジェグリーニなどが例として挙げられ
あくまで個人的な分類であるが、自軍に注力といってもやり方は監督の数だけあるだろうし、後者の監督が前者のような考えをもってないというわけではない。
あくまでどちらに軸足をおいているのか?という分類である。
ビエルサというサッカーの競技そのものから逆算するような例外的な監督も存在する。
今試合のとサッリとペップグアルディオラはどうだろうか。
サッリ監督は前者のように思える。あくまで自身の理想とするプレーモデルを持ちどんな相手であっても自身の型に持ち込み勝負する印象がある。自身の勝ち筋があるパターンである。
グアルディオラはどうだろうか。
独自のプレーモデルや哲学を持ち行く先々のクラブで先進的なサッカーを披露する彼は前者のチームに注力するタイプの監督に一見思える。
しかし彼の試合を見ると対戦相手によってかなりプレーを変えており、対策を多く打ち出しているのがわかる。
つまりグアルディオラは
自軍のプレーの確立と相手との差異から生まれる対策を高いレヴェルで同時に行うことが出来る稀有な監督
なのではないだろうか。
言い過ぎたかもしれないが。
そしてグアルディオラの得意技の一つが
相手軍との差異のうち弱点や強みとなるところに自軍の強みをぶつけること
であるだろう。
古くは2CBと2CHの怪しげなエリアをメッシというライン間で最強の男に使わせる「偽CF」
守備も攻撃もできるSBを守備時はカウンター対策に攻撃時はビルドアップのパターン増加につなげることができた「偽SB」
などなどこれらは戦術ありきではなく、自軍の強みと相手軍からの差異との融合からおきた現象であったと思われる。
そんなグアルディオラの特性がよく出たのがこの試合だったのかもしれない。
仕組みと現象を見よう
前置きが長くなってしまったがここでよく見られた現象からグアルディオラとサッリの狙いを見ていこうと思う。
試合序盤はお互いに強度の高いプレスをかけあっていく。
共に主導権を握りたいチームなのである意味当然の選択なのかもしれない。
シティのビルドアップ
チェルシーのハイプレスに対していかなる対策をシティはほどこしたのだろうか。
特に気になったのは自陣の深い位置(ゴール付近)でCBとキーパーが同じ高さでボールをを回し相手を引き込んでいったプレーである。
守備側はボールを奪いたいときになるべく狭いエリアに保持側を追いやりたい。
これは鳥かごなどのボール回しの時エリアが小さいほどボールを奪いやすいのと同じである。所謂圧縮というやつ。
対して保持者はなるべく大きなエリアでボールを保持したい。敵のプレッシャーを緩和したいからである。
そこでシティの一手が図のプレー
相手を意図的に間延びさせフェルナンジーニョ付近のスペースを拡大する。
デメリットとしては距離が伸びることによってパスの精度が要求されてしまうことだがラポルテやエデルソンにストーンズだと回せるという計算だろう。
また相手をつり出すことによりエデルソンやラポルテのロングボールがより生きてくるという憎い計算も披露。
次の一手だ
次の一手がアンカー脇やカンテが飛び出してくるスペースにアグエロを降りさせるというものである。
近年のアグエロはこの降りて受ける動きが予備動作を含めて素晴らしいので、その長所をチェルシーの弱みとなる部分にぶつけるのである。
この試合を通してアグエロの偽CF的な動きはチェルシーを苦しめていた。
この一手にはギュンドアンが一列降りてフェルナンジーニョと同じ列にいることが伏線になっている。
ギュンドアンはバークリーもしくはカンテがフェルナンジーニョを消しに行ったときに1列降りてサポートする。この辺は敵の狙いに対して素早く次のプランが発動する流石のシティであった。
考察チックなこと
このアグエロが降りる現象は頻繁に見られた(例えば前半なら12、14、23、31、43分)
この現象を先ほどの仮設から考えていく。
一番の理由としては強みのほうで、
- アグエロが左のハーフスペースで受けることが得意である。
- ラポルテの縦パス能力
特にカンテの出足を狙うラポルテのセンスはエグイ。
相手の弱みから見てみると
- 守備力の低いジョルジーニョの脇を狙う
- 完成度が高くないハイプレスを逆手に取る
あたりを狙ったのだろう。
ここで疑問が一つ、なぜバークリー側つまりはシティから見て右サイドではこの現象が少なかったのだろうか。
まずは自軍目線
シティの有効な攻め筋の一つとしてラポルテ(時々エデルソン)から対角線へのロングボールがある。
相手のプレス網を掻い潜る手段の一つなのだが、蹴った後にも仕組みが用意されている。
この試合対角線の先にはBシウバである。彼はめちゃくちゃ上手くてボールも隠しながらプレーできるが流石に孤立無援だと厳しい。
そこで登場するのが降りないほうのIHであるデブルイネである。
彼がこの試合あまり下がらず高い位置でプレーしていたのは攻撃性能を活かすことに加えてこのロングボール後のサポートもタスクの一つだったのではなかろうか。
逆サイドのスターリングはスピードがあり単独でもボールを前進できるのでそこまでサポートの必要はない。
よって降りるのは右のデ・ブライネではなくギュンドアンになると。
また単純にストーンズよりもラポルテの方が上手いなどなど。
次に相手側を見ていくとカンテとバークリーの違いがある。
狙いとしてはよく動いてしまうカンテをギュンドアンが動かしパスコースを作る予定だったのだろうか。
ただバークリーもそこまで守備が得意そうではなかったので単にストロングサイドで攻めただけなのかもしれない。
ゴラッソありキレイな崩しありで6-0でシティが快勝する。
雑感
アグエロが量産モードに入ったシティ。グラウディオラ3年目にして恐ろしい完成度を誇っている。相手の行動から自身の行動を変える速度が尋常ではなくしかもチームでしっかりと統一と共有されている。
個々で見るとBシウバは本当にいい選手。
走れて上手くて戦えるという貴重さ、オシムさんとかめっちゃ好きそう。
中に入って数回しくじったジンチェンコは結局3ゴールに絡む活躍。
左SBがシティの今のところの数少ない弱点であろうか。
ジェズスは奮闘が見られ、6点目の後にスターリングではなくチャンスを作ったジェズスに真っ先にかけよったDシルバさんは絶対いい人。
チェルシーは今回は中々取り上げることが出来ず。
サッカーとしては面白いがいかんせんコマ不足か。特にIHはもう少し適役となれる選手がほしいところ。
ただチェルシーはもしかすると成功体験からカウンター戦術がアイデンティティとして確立されてるのかなとも思える。うまく時代にアップデートできるだろうか。
そんなチームの中でも違いを作り出していたイグアインさんは流石である。
アザールはくそうまいが。。。って感じ。
レアル行くんかなぁ。